糖尿病網膜症とは

糖尿病に罹患されている患者さまにみられる合併症のひとつが糖尿病網膜症です。
そもそも糖尿病とは、血中に含まれている脳や体のエネルギー源となるブドウ糖が何らかの原因によって細胞に取り込まれなくなることで、血液中でダブついてしまい血糖値(血中に含まれるブドウ糖の濃度)が慢性的に上昇したままの状態を言います。

この場合、膵臓で作られているホルモンの一種であるインスリンが機能不足を起こすことがきっかけとなります。
その原因としては、主に自己免疫反応による膵臓のβ細胞の破壊による分泌不足(1型糖尿病)、あるいは不摂生な生活習慣(過食、運動不足、喫煙、多量の飲酒、ストレス 等)等による膵臓の疲弊からのインスリンの分泌量の低下、量が十分でも効きが悪くなる(インスリン抵抗性)といったこと(2型糖尿病)が挙げられます。

主な症状

なお血糖値は、慢性的に高い状態が続いても、自覚症状は出にくいです。そのため放置しやすく、病状を進行させやすくなります。
ある程度まで進行すると、喉が異常に渇く、多尿・頻尿、全身の倦怠感、食欲はあるが体重が減少する、などの症状がみられます。
それでも放置をしていくと、やがて血管障害を引き起こします。

なかでも細小血管はダメージを受けやすく、これらが集中している網膜は合併症を発症しやすいです。これを糖尿病網膜症と言います。
ちなみに同疾患は、糖尿病腎症、糖尿病神経障害と共に糖尿病三大合併症と呼ばれています。

治療をしなければ失明の可能性も

糖尿病を発症しても直ちに糖尿病網膜症を併発することはなく、合併症発症に至るまでには数年~10年はかかるとされています。
ただ糖尿病を発症した日が明確に判明することはありません。
そのため、糖尿病と診断されたら何の眼症状がなくても、定期的に眼科を受診するようにしてください。

なお糖尿病網膜症も初期から自覚症状はみられません(網膜の中心である黄斑部に病変(主に浮腫)があれば、初期でも視力低下や物がゆがんで見える等の症状がみられます。これを糖尿病黄斑浮腫と言います)。

ただ進行期になると、脆くて破れやすい新生血管が網膜に発生し、同血管が破れるなどすると硝子体に出血がみられるようになります。
このような状態になると、飛蚊症、霧がかかった見え方をする、急激な視力低下などの症状がみられます。
それでも放置を続ければ、失明することもあるので注意が必要です。

検査について

診断をつけるための検査としては、網膜の状態や血管の様子を確認する眼底検査をはじめ、血流の途絶えている部分や新生血管の有無を調べる蛍光眼底造影のほか、黄斑部の浮腫の有無などを調べる光干渉断層計(OCT)などの検査を行います。

治療について

病状の進行の程度によって内容は異なります。
発症初期の患者さま(単純網膜症)では、糖尿病患者さまが行っている血糖コントロールの治療(食事療法、運動療法、経口血糖降下薬 等)によって進行を抑制することができます。

ある程度は病状が進んだ状態(増殖前網膜症)でも症状が現れないことは少なくないです。この場合も血糖コントロールの治療が中心となりますが、血流の途絶えた部分がある、新生血管がすでにある場合は、レーザーによって血管を焼き固める、あるいは焼き潰すレーザー光凝固術が行われます。
糖尿病黄斑浮腫に対しては硝子体注射を行います。詳しくはこちら。

また進行期(増殖網膜症)にある場合も血糖コントロールの治療は継続し、新生血管などに対するレーザー光凝固術も行われます。
さらに新生血管が破れて硝子体に出血がみられ濁った状態になっている、牽引性網膜剥離がある場合は、硝子体手術が選択されます。